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第2話 残酷な影 前編

時に魔族は人間を絶望へと突き落す、だがそれは魔族に限った事ではなく人間自身もその原因となりえることを忘れてはならない。人の持つ憎しみや悲しみは予想もしない形で人の前に現れすべてを飲み込み新たな悲しみを生み落とすだろう。

ミオアイコン

「ところでナイトは何故この森に?」

ナイトアイコン

「食糧を調達に来たんだ、この森の食材が一番だからな」

ミオアイコン

「食材の調達のために森に・・・」

ナイトアイコン

「と言うより、俺の住んでる村がこの森の中にあるんだ」

ミオアイコン

「村がこの森の中に・・・!?」(それは、まずい・・・)

その言葉を聞いた途端とたんに顔色を変えたミオにナイトはたずねた。

ナイトアイコン

「どうかしたのか・・・?」

ミオアイコン

「そうね・・・どこから話せばいいのか」(私が来たことが・・・?いや、それはありえない・・・)

チェリーアイコン

単純たんじゅんに言うと、ナイトの住んでる村の人が危ないって事」

ナイトアイコン

「それって・・・どういうことだ?」

ミオアイコン

「今言えるのは、ナイトをおそった奴が貴方あなたの村をおそいに行く可能性が限りなく高いってこと」

ナイトアイコン

おそった奴!?・・・あの黒い奴の事か?」

ミオアイコン

「彼らはしつこい性質で、一度狙った人間は殺さないと気が済まないの・・・」

ナイトアイコン

「それなら狙われるのは俺だけなんじゃ・・・」

チェリーアイコン

「あいつらのターゲットは周りの人間全てにおよぶんだ」

チェリーアイコン

「ナイトの匂いを少しでも感じればね」

ミオアイコン

「それに・・・さっきの奴は変異種、力が目覚めたばかりでさらに凶暴になっていく時期・・・確実に皆殺しにする」

ナイトアイコン

「そんな!早く村の皆に伝えないと!」

駆け出そうとしたナイトの腕をミオが掴んだ。

ミオアイコン

「待って!・・・今から行っても間に合わない・・・」(間に合わなければ・・・)

ナイトはミオの手を振りほどいた。

ナイトアイコン

「少しでも助けられる可能性があるんだったら俺は行く!」

ミオアイコン

「もし、間に合わなかったら・・・敵地に乗り込んで命を落とすことになるかもしれない・・・、それでもかまわないと言うの・・・?」

ナイトアイコン

「そうだとしても見捨てられるかよ・・・家族を・・・」

そう言ったナイトの姿がミオにはどこか亡き兄の姿に重なって見えていた。

ミオアイコン

「やっぱり・・・行かせられないよ・・・」(失いたくない気持ちは私も知ってるもの・・・)

ナイトアイコン

「どんなに止められても俺は!」

ミオアイコン

「違う・・・私がナイトの村に行く」

ナイトアイコン

「へっ?」

ミオアイコン

「私があの魔族を取り逃がさなければ、もう少し危険も少なかっただろうし・・・」

ミオアイコン

「私の不始末のせい、だから・・・」

ナイトアイコン

「断る」

ミオアイコン

「まだ全部言ってない・・・」

ナイトアイコン

「でも、そういうことだろ?」

ミオアイコン

「まぁ・・・そうだろうけど」

ナイトアイコン

「ただ、待つなんて!何もせずに待つだけなんて!俺は嫌だ!」

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「イヤだろうとなんだろうと・・・死ぬかもしれないのに」

ミオアイコン

「待つのが嫌っていう感情一つでこの先の人生すべてを終わらせてもいいの!?」

ナイトアイコン

「今ここで何もしなかったら、俺は一生後悔いっしょうこうかいする」

ナイトアイコン

「そんなの死んでるのと変わらないだろ・・・しかも危険を知ってて女の子に行かせるとかなおさらだ」

ミオアイコン

「私は普通じゃないし・・・あんな奴には負けない、それに女の子にカウントする必要性もない」(そもそも人間であるかどうかも怪しいとこだし)

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「普通じゃないって?」

チェリーアイコン

「ま、まぁ細かい事はともかく、急がないと」

2人の会話をさえぎるようにチェリーが割って入った。

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「今はじっくり話してる場合じゃないよ・・・」

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「ナイト、ミオは並みの剣士とかより強いから心配いらないよ。だから村の場所教えて?急がないと間に合うものも間に合わなくなっちゃう・・・」

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「口で教えるのはどっちにしても難しい・・・」

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「・・・行こうチェリー」

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「え・・・ど、どこに」

ミオアイコン

「村を捜しに・・・」

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「!?」

チェリーアイコン

「!?」

第2話 残酷な影 中編

そう言って歩きだしたミオの肩にチェリーが飛び乗り小声でささやく。

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「ミオ、ナイトがこれ以上危険な目に会わないようにしたいのはわかるけど」

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「一度ナイトも狙われてるんだよ?ここで別行動しておそわれたらもとも子もないんじゃない?」

そう目を細めたずねたチェリー。

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「別にそういうわけじゃ・・・ない・・・けど、それ以前に私は奴らに無条件に狙われているようなもの、別の個体が嗅ぎつけて寄ってくる可能性もあるの」

チェリーアイコン

「例え離れてても別の奴におそわれるかもしれないよ?その時はどうするの?」

ミオアイコン

「どうするのって・・・」

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「ナイトはミオと違って武器もないし逃げ切れるかなぁ・・・」

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「・・・」

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「ナイト、やっぱり道案内だけお願いしてもいい・・・?」

ナイトの前にスタスタと戻ってきたミオはそうたずねた。

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「・・・!?どうしたんだ?急に・・・?」

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「そっちの方が、色々都合が良いというか・・・時間の節約になると思いなおした・・・と言うか」

そう言いながらチェリーに視線を向ける。

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「私に振られても・・・」

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「何かすごく不本意な感じが出てる気が・・・」

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「道案内は構わないけど、その前に俺をおそった奴の事教えてくれないか?」

情報を求めるナイト。

その内容はミオの素直な感情からすれば到底答えることのないものだった・・・だが。

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「分かった・・・」(あ・・・つい承諾してしまった・・・)

その答えはミオ自身にとっても予想外なものだった、自らの答えに戸惑うミオをよそに会話は進んでいく。

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「助かる、ダメもとで言ってみるもんだな」

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「今のは、ちょっと意外だったね」

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「いや、今のは・・・」

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「どうかしたのか?」

そう微笑んだナイトの言葉に詰まるミオ。

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「い、いや・・・なんでもない」(タイミング・・・完全に逃した・・・)

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「とりあえず話は道案内しながらでいいよな」

そう言い歩きだしたナイトに少し戸惑いながら追いかける。

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「良いけど・・・そんなに先ばしらないで」

ナイトの案内で森を進む一行、話題は勿論もちろん敵である魔族について。

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「じゃあ、あいつらは目の前の奴を手当たり次第におそうのか?」

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「昔は特にその傾向が強かったかな・・・、今は少し違う気がする」

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「昔って・・・?いつから戦ってたんだ・・・いったい・・・」

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「奴らとは腐れ縁なの、あまり気にしなくていい」

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「逆に気になるな、それ・・・」

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「まあ、そういわずに」

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「ともかく、昔は個々が好き勝手やってる感じだったけど・・・」

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「今はどことなく統率がとれてる感じがする」

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「組織的にまとめられる実力者が出てきたって感じか」

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「そんなところ・・・それともう1つ」

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「・・・?」

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「面倒なことが起こってる」

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「面倒なこと?」

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「人間の魔族化・・・」

自らの耳を疑うナイト。

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「人間の魔族化ってなんなんだよ・・・」

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「詳しくは分からない、だけど・・・」

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「それまで普通に過ごしていた人がある日突然、自我を失い暴れはじめ・・・」

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「姿を消す、そんな話を近年耳にし始めた」

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「精神病とかじゃ・・・」

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「その線も調べたんだけど違いそう、町はずれで血まみれの旅人に会ったのだけど・・・」

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「その人の話では・・・目の前で突然、友人が人じゃなくなったって」

そう語るミオの目は何処か物悲しく映る

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「人じゃなくなるって・・・どういう」

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「で・・・その旅人は?」

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「亡くなった・・・いや・・・」

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「私が止めを刺した・・・」

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「今・・・なんて・・・?」

第2話 残酷な影 後編

予想外の答えにナイトは戸惑とまどいを隠せないでいた・・・。

チェリーアイコン

「あれは・・・仕方ないと思う・・・」

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「一体何が・・・」

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「理由は分からない、だけどもうすぐ息を引き取る・・・」

「そんな時にその人は変異を始めた」

チェリーアイコン

「その人がミオに頼んだんだ」

チェリーアイコン

「自分の友人のようになってしまったら罪のない人たちを手にかけてしまう・・・だから・・・」

ミオアイコン

「その前に止めを刺してくれと・・・」

ミオアイコン

「とても勇気のいる決断だったと思う・・・」

ミオアイコン

「自分の意識があるのにそれを終わらせるという決断をするのは本来とても難しいと思うから・・・」

ナイトアイコン

「・・・」

ミオアイコン

「・・・恐い?・・・私の事・・・」

いかなる理由があるにしろ人の命を奪っていることには違いない、その問いは自らの感じている罪悪感からだったのかもしれない・・・。

ナイトアイコン

「いや、恐いとは思わない・・・」

ナイトアイコン

「昔何があったとしても、何をやってたとしても・・・今俺の前にいるのは・・・」

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「危険をおかしてまで俺を救ってくれた恩人だ」

ミオアイコン

「・・・ナイトって変わってるよね・・・」

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「どうしてそうなる・・・」

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「い、いや・・・普通なら・・・」

ミオアイコン

「と言うか、だいたいの人は私のこと怖がるから・・・」(まあ、ナイトは私の血のこと知らないからか・・・)

ナイトアイコン

「・・・?」

ナイトが何かを言おうとした時、チェリーがそれをさえぎる。

チェリーアイコン

「急いだ方がいいかも知れないね」

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「そのようね・・・何かが来る・・・」

ミオ達は後方から猛スピードで近づく何かの気配を感じていた。

ナイトアイコン

「どうしたんだ!?」

ミオアイコン

「何かがこっちに向かってきてる・・・」

ミオアイコン

「村まであとどれくらいなの?」

ナイトアイコン

「あそこに見える橋を渡ればすぐだ」

指をさす方に架かる橋を3人の目は捉えていた。

チェリーアイコン

「急ごう!」

け足で辿り着いた橋で目にしたのは・・・

橋の床板は所々抜け落ち誰が見ても渡るのは危険だと感じる状況だった。

ナイトアイコン

「何だよ・・・コレ・・・」

チェリーアイコン

「橋の床板が穴だらけだよ、まるで踏み抜いたみたい」

瀕死ひんしの重傷・・・って感じね」(だいぶ重量オーバーなのが通った感じ・・・)

ミオアイコン

「崩れ落ちていないのが不思議なくらい」(でも・・・これで間違いない・・・この先にさっきの奴がいる)

チェリーアイコン

「ナイト、他に道はないの?」

ナイトアイコン

「あるにはあるが・・・半日はかかる」

チェリーアイコン

「半日・・・!!!」

ミオアイコン

「その頃には確実に村は無い・・・」

夜も近づき闇を好む魔族達が動き出すまで時間はさほど残されてはいなかった。目の前の村を諦めるか、危険を承知で橋を渡るか・・・その選択肢は2つに1つ・・・。

ミオアイコン

「渡るしかなさそうね、この橋を」

ナイトアイコン

「行こう」

選択肢は1つしかないのと同じだった。

ナイトアイコン

「・・・来たみたいだな」

背後から感じる視線に振り返ると、そこには黒い獣の姿があった。

「トワイライトウルフ、群れでの狩を得意とする魔獣・・・しかも他にもいるみたいね」(橋の先にも・・・)

ミオアイコン

「ナイト、悪いけど先に渡る・・・」

ミオアイコン

「次にナイトが、チェリー後ろは任せる・・・」

そう言い残しミオはこわれかけの橋を素早く走り抜けた。

チェリーアイコン

「うん、こっちの狼の相手するよ」

呟いたチェリーの手首からうっすらと輝く刃が現われる・・・。

チェリーの暗器はまたたく間に周囲の獣を切り裂き、闇へと返す。

チェリーアイコン

「ちっちゃいからって油断してたでしょ」

その頃先に渡ったミオは・・・。

ミオアイコン

「ナイト!あせらずゆっくり渡って・・・」

ナイトアイコン

「そうしたいのは山々なんだけど・・・」

後ろは敵、橋は穴だらけで不安定なうえに穴の下に広がるのは増水した激流げきりゅうの川・・・とてもあせらずにはいられない状況である。そんな中、ナイトの目が影を捉えた。

ナイトアイコン

「ミオ!後ろだ!」

ミオアイコン

「!?」

振り返るとそこには2匹のトワイライトウルフの姿が、目が合うとすぐさま2匹は飛び掛かってきた。

ミオアイコン

「やっとお出ましね、でも・・・」

素早く振りぬいたミオの手にはいつの間にか忍刀が握られていた・・・。

ミオアイコン

「地をける花刃かじん桜花疾風刃おうかしっぷうじん

その一閃いっせんから放たれた光刃はトワイライトウルフを一瞬でほおむり去る。

ミオアイコン

「あと1匹・・・」

残された1匹の攻撃を身をひるがえしけたミオはその勢いのままトワイライトウルフを崖下へり落とした。

ミオアイコン

「他に気配は・・・少なくとも近くにはない」(待ち伏せなんて・・・、知恵の回る奴がいたのね)

ミオがトワイライトウルフを片付けたころ・・・もう一方、チェリーは何かの気配を感じ辺りを警戒けいかいしていた。

「何だろう、かすかに何かの気配が」

そんなチェリーの頭上を大きな影が通り越した。

チェリーアイコン

「な・・・何、あのデカいトワイライトウルフは・・・」(獣のくせに重役出勤とか)

だがチェリーはすぐにその事態の重さを思い知った、チェリーを飛びこしたトワイライトウルフは真っ直ぐにナイトのいる方へ向かって橋をける。もちろんすぐさま追いかけるチェリーだが体格差のためか追いつくことができない。

チェリーアイコン

「私の・・・せいだ・・・」

ミオアイコン

「あのトワイライトウルフ・・・このままじゃ間に合わない・・・」

ミオアイコン

「ナイト、伏せて!」

ナイトアイコン

「!!!」

伏せたナイトの頭上をミオのった手裏剣しゅりけんが通り過ぎた。その手裏剣しゅりけんはトワイライトウルフの目に突き刺さりバランスを崩したのだが

ミオアイコン

「止まらない!?」

その時だった、大きなトワイライトウルフの重さで橋の床板が完全に崩壊したのだ。崩れ落ちる床をり飛び上がるナイトだが、かろうじて届いた岩はヒビが入ってもろくなっていた。

ナイトアイコン

「しまっ・・・」

当然、ナイトの体重を支えられる訳は無かった。

ミオアイコン

「ナイト!!」

崖から身を乗り出したミオの手がナイトの手を掴んだ・・・。

そんな2人に向かって落ちたと思われたトワイライトウルフが最後の跳躍ちょうやくをみせる。

ミオアイコン

「・・・!!!」

ナイトアイコン

「・・・!!!」

ミオアイコン

「大人しく落ちていればいいものを・・・」

ナイトの体重を支えるためミオに回避の選択肢はない。

ナイトアイコン

「ミオ、俺の手を離せ!このままだと」

ミオアイコン

「その申し出は受け入れられないし、絶対にこの手を放したりしない・・・」

そう言ったミオの視界のほとんどはすぐさま大きく開けられた口で遮られる。

ミオアイコン

「これは、きつい・・・」(どうにかナイトだけでも、引き上げないと・・・)

思わず自身の死を意識したミオだったが・・・。

ミオアイコン

「・・・!?・・・止まった・・・?」

目の前のトワイライトウルフの頭を何かが貫いていた・・・

消滅していく黒い影の中から現れたものはうっすらと風をまとった剣だった・・・。

ミオアイコン

「これは・・・剣・・・」

ナイトアイコン

「生きてる・・・か?」

ミオアイコン

「今のは・・・ナイトが・・・!?」